そして今度は、芝居を書き演出するという、とんでもないことが起きた。焚きつけたのは斉藤昌子さんで、なんの実績もない僕のもとに、ベテランの俳優さんたちが気持ちよく集まってくれた。嬉しいことである。
失礼ながら僕同様初老に達した入たちだから、「老人ホーム」を舞台にしようと即座にきめた。といっても、現実の「老人ホーム」ではない。年老いてもつきない、生命力ヘの讃歌を喜劇にした。出演者それぞれの魅力を十分に楽しんでもらえれば、“座付作者”として満足である。
マルセ太郎(93年11月公演チラシより)
1993年11月8日(月)〜13日(土)8ステージ 渋谷ジァンジァン初演 出演 北村昌子 原知佐子 斉藤昌子 矢野陽子 中村まり子 納谷悟朗 松岡文雄 葛飾刻斎 永井寛孝 松山薫 マルセ太郎 スタッフ◎照明:日高勝彦/音効:是安房雄/作曲:花本彰/作詞:永井寛孝/ 舞台監督:藤原常吉デザイン:冨永浩一(ROBOT)/ イラスト:イノダ・イノヲ 台本
ストーリー
舞台は、ある「老人ホーム」の談話室。ここには七人の老人と三人の若い施設作業員が登場するが、誰が主人公というわけではなく、またドラマらしい筋が展開されるのでもない。各俳優の個性的な会話によって運ばれる喜劇である。だからあえて役名をつけず、俳優名ででてもらうことにした。「ホーム」のマドンナ、北村昌子は元女優でブリッ子ちゃん。原知佐子は女学校の教員あがり、過去の恋物語を話したがる斉藤昌子、噂好きの矢野陽子。加えて男性は、予科練帰りの保守主義者納谷悟朗、得意の弁舌でみんなを煙にまくリベラリスト松岡文雄、いつまでもチャンピオンの夢を抱き続ける、元ボクサー葛飾刻斎。そして、彼らの世話をしながら、老人パワーに圧倒されしときに感動させられる若者たち三人も個性的である。八方美人の永井寛孝、クールな中村まり子、すぐ涙ぐむ感激屋の松山薫。以上十人の登場人物によって、くり展げられる人間讃歌である。たとえていえば、ゴーリキー作「どん底」の“明るい版”と言えよう。